食品工場や薬品工場、精密機器の製造現場などでは、衛生管理や異物混入防止、クリーンルームの環境維持のために、従業員が作業服(クリーンウェア)やマスク、手袋、ゴーグルなどを着用することが義務付けられています。こうした厳格な環境において、オフィスのエントランスと同じような入退室管理システムを導入しようとすると、「認証のたびに手袋やマスクを外さなければならず、業務効率が落ちる」「衛生面でのリスクが生じる」といった独自の課題に直面します。
工場のセキュリティ強化や正確な労務管理を行うためには、手袋やマスクを着用した状態のままで、かつ「なりすまし」を防げる高精度な認証システムの選定が不可欠です。近年は、ディープラーニング技術の進化などにより、顔の一部が覆われていても高い精度で識別できるシステムや、衣服に触れずに通過できる非接触型の製品が数多く登場しています。本記事では、工場の現場において手袋やマスクを着用したままスムーズに入退室管理を行う方法や、最適な認証システムの種類、導入のメリットについて詳しく解説します。
一般的なオフィスで広く普及している「指紋認証」や「暗証番号(テンキー)入力」などのシステムは、手袋の着用が必須となる製造現場には向いていません。まずは、現場でどのような問題が発生しやすいのか、具体的な課題を整理しておきましょう。
もし手袋を外して指紋認証を行ったり、素手でテンキーのボタンに触れたりする運用にした場合、せっかく消毒・洗浄した手指や手袋が、リーダーの表面に付着した菌や皮脂で再汚染されてしまうリスクがあります。また、室内に立ち入る前に毎回「手袋を外す、認証する、再度新しい手袋を着用して消毒する」という手順を踏むことは、工場全体の生産性を著しく低下させる原因となります。
一般的なカメラを用いた簡易的な顔認証システムの場合、目元以外がマスクやクリーンキャップ(衛生帽子)、防護メガネ等で覆われていると、顔の特徴点を正しく抽出できず、エラーが多発して入場口に渋滞が発生してしまいます。これにより、勤務開始前の混雑時に従業員へ大きなストレスを与えてしまうだけでなく、スムーズな現場への入場を妨げる結果になってしまいます。
これらの課題を解決し、工場の過酷な衛生基準と強固なセキュリティを両立させられる、代表的な3つの認証方法の特徴を解説します。
近年、食品工場や半導体工場で最も導入が進んでいるのが、マスク着用を前提とした高性能な「顔認証システム」です。最新のAIアルゴリズムを搭載した端末は、顔の大部分がマスクや衛生帽子で隠れていても、露出している目元や眉、鼻筋、骨格の特徴を高精度に分析して瞬時に識別します。
手袋を着けたまま、端末に顔を向けるだけで1秒未満で解錠されるため、完全に非接触(タッチレス)での入退室が実現します。両手で原材料や台車を持った状態でもそのまま通過できるため、工場の動線を一切妨げません。また、製品によっては「マスクを着用していない従業員」を検知してアラートを鳴らし、入場拒否をする衛生管理機能を備えたものもあります。
虹彩認証とは、眼球の黒目の部分にある複雑な模様(虹彩)をスキャンして個人を識別する生体認証システムです。双子であっても異なり、経年変化もほぼないため、生体認証のなかでも極めて高いセキュリティレベルを誇ります。
目元さえ露出していれば完全に識別可能なため、防護服や厚手のマスク、フードなどで全身を完全に覆う必要がある製薬工場のクリーンルームや、化学物質を扱うエリアの管理に最適です。指紋や手のひらと違って手荒れや手袋の影響を一切受けず、高精度かつスピーディーに動作します。ただし、顔認証端末に比べると導入コストがやや高額になる傾向があります。
従業員各自に配布した社員証やICカード(FeliCa等)を、リーダーにかざして解錠する方法です。手袋を着用した状態であっても、ポケットやクリーンウェアのパスケースに入れたカードをリーダーに近づけるだけで解錠できる長距離対応(RFID)の製品を選べば、手で直接触れることなくスマートに入退室できます。
生体情報の事前登録作業が必要ないため、工場の期間従業員やパートスタッフの入れ替わりが激しい現場、定期的に出入りする外部のメンテナンス業者などに対しても、カードを貸し出すだけで柔軟に対応できるのが強みです。ただし、カードの紛失や「他人に貸し借りして代わりに打刻する(なりすまし)」といった不正リスクには注意が必要です。
ご紹介した3つの認証方法の違いを、工場の現場視点で比較できるよう一覧表にまとめました。自社の衛生基準や予算に合わせて検討してください。
| 認証方法 | 手袋着用のまま | マスク着用のまま | なりすまし防止力 | 工場の現場における主なメリット |
|---|---|---|---|---|
| 高性能顔認証 | ◎ 影響なし | ◎ 識別可能 | 高い | 手ぶらで通行可能、未着用警告機能あり |
| 虹彩(目)認証 | ◎ 影響なし | ◎ 識別可能 | 極めて高い | 完全防護服でも可、最高峰の防犯性 |
| ICカード(RFID) | 〇 かざせば可 | ◎ 影響なし | 低い | パートや外部業者の管理が容易、低コスト |
入退室管理システムは、単に扉の鍵を開け閉めするだけでなく、工場特有の衛生・安全設備と連動させることで、その価値を何倍にも高めることができます。
クリーンルームなどの入り口において、「正しい認証が行われ、かつ手洗い・アルコール消毒を規定秒数行うこと」や「エアシャワーが一定時間稼働し終わること」を条件として、はじめて次の扉が解錠されるインターロック(連動)制限をかける運用が効果的です。これにより、手順を遵守しない従業員の入室を物理的に防止し、クリーンルールを100%徹底させることができます。
顔認証端末の多くには、非接触型の体温測定(サーマル)センサーを搭載したモデルが用意されています。入退室の認証と同時に、手袋やマスクをしたまま従業員の体温を0.2〜0.5秒ほどで測定し、発熱のあるスタッフの入場を未然にブロックするとともに、その測定データをログとして自動保存します。食品工場などにおけるHACCP(ハサップ)対応の一環として、毎日の健康状態記録の自動化・省力化に大きく貢献します。
衛生管理と生産性の両立が求められる工場の入退室管理において、手袋やマスク、クリーンウェアを着用したまま認証できるシステムの導入は、もはや必須の防犯・衛生対策と言えます。目元だけで瞬時に個人を特定する最新の顔認証システムや虹彩認証システム、非接触のICカードシステムなど、自社の製造ラインの環境や従業員の雇用形態に合わせた最適な仕組みを選定することが大切です。まずは工場の施工実績が豊富な専門業者へ相談し、実際のクリーンウェアを着用した状態でのデモなどを通して、確実な動作とスムーズな動線が確保できるシステムを比較検討してみてはいかがでしょうか。
本サイトでは、市場にある入退室管理システムを徹底調査。
入退室管理システムの目的に適した条件で選出したシステムをおすすめの製品として紹介します。

選定条件
2024/3/8時点Googleで「入退室管理システム会社」で検索して公式サイトが該当した81社の142製品を調査。その中で、製品比較の際に必要な費用の明記があり、中間マージンをかけず齟齬なくスムーズに対応してもらえる自社一貫対応している7製品を調査。以下の条件で選出した入退室管理システムを導入目的別に紹介しています。
・カオゲート:入退室管理システムの平均利用期間である5年で費用を計算した時に7製品中最も安く、コスパの良いシステムを求めているユーザーに適していると判断
・入退室管理システムNet2:入退室管理システムの認証方法の中でも、より精度が高い認証方法(※)に対応していることから高いセキュリティを求めているユーザーに適していると判断
・Gate Access Control System:7製品中、勤怠を管理システムとの連携ができることから、入退出管理と勤怠管理を同時にしたいユーザーに適していると判断
※導入内容により異なります。詳しくはS-TEKTにお問い合わせください。