オフィスのセキュリティ強化や、老朽化したシステムの更新(リプレイス)を検討する際、「配線工事にどれだけの費用と時間がかかるのだろう」「壁や天井を剥がすような大掛かりな工事は避けたい」と悩む担当者の方は非常に多いです。セキュリティ機器の導入やリプレイスにおいて、最もコストと手間がかかるのが配線工事です。
実は、既存のセキュリティシステムで使っていた配線をそのまま「流用」して、最新のシステムへアップグレードする方法があります。既存配線を活用することで、導入コストを大幅に抑えつつ、短期間でセキュリティを強化することが可能です。本記事では、既存配線を流用するメリットや注意点、流用が可能なシステムについて詳しく解説します。
既存の配線をそのまま活かしてセキュリティシステムを更新することには、予算面だけでなく、オフィスの日常業務を維持する上でも数多くのメリットがあります。まずは、流用によって得られる代表的な3つのメリットを紐解いていきましょう。
セキュリティシステムの導入において、機器代金と同じかそれ以上に大きな割合を占めるのが「配線工事費」です。壁の中にケーブルを通す、あるいは天井裏を這わせるためのルート確保(通線工事)には、多大な人件費と材料費がかかります。
既存の配線をそのまま流用できれば、これらの面倒な新規配線工事やケーブルの購入費用がほぼ不要になります。これにより、リプレイス時の初期費用を数十万〜数百万円単位で劇的にカットすることが可能です。
オフィスビルや工場で新規の配線工事を行う場合、壁の穴あけや天井板の取り外しなどにより、大きな騒音や作業員の頻繁な立ち入りが発生します。そのため、通常業務を一時的に中断したり、休日や夜間に工事枠を設定したりせざるを得ず、調整に手間がかかります。
既存配線の流用であれば、主に端末(カメラやリーダー、コントローラー)の交換作業だけで済むため、工事期間を極めて短く抑えることができます。業務への支障を最小限に抑えながら、スムーズな移行が可能です。
歴史あるビルや意匠性の高いオフィス、あるいは原状回復義務のある賃貸物件では、壁や天井に新しく配線用の穴をあけることが難しいケースが多々あります。また、やむを得ず配線が露出してしまうと、オフィスの美観を損ねる原因にもなります。
既存配線の流用なら、すでに通っているルートをそのまま使うため、壁への穴あけや新規の配管工事が不要です。オフィスの景観を守りつつ、建物へのダメージも防げるため、ビルオーナーや管理会社との交渉も非常に円滑に進みます。
一見すると「最新のデジタル機器に古い配線は使えないのでは?」と思われがちですが、様々なセキュリティシステムで既存配線の流用によるリプレイスが可能です。
すでに電気錠や簡易的なカードリーダーが導入されている場合、既存の通電金具(ドアと枠をつなぐ配線パーツ)や、ドアから制御盤まで伸びている電気錠用ケーブルをそのまま流用できます。
最新の制御コントローラーに交換するだけで、既存のドアを傷つけることなく、スマートフォン解錠やクラウドでのログ管理に対応した最新システムへアップグレードすることが可能です。配線流用に対応したマルチコントローラーを導入するのが一般的なアプローチです。
従来のアナログ防犯カメラで広く使われていた「同軸(どうじく)ケーブル」は、最新のIPカメラ(ネットワークカメラ)用LANケーブルとは規格が異なります。
しかし、現在では「同軸-LANコンバーター(変換器)」と呼ばれる機器を通すことで、既存の同軸ケーブルにデジタル信号と電源(PoE)を乗せて送信できるようになります。これにより、配線を引き直すことなく、アナログ画質からフルHDの高画質ネットワークカメラシステムへと置き換えることができます。
マンションやオフィスのエントランスに設置されているインターホンやオートロックも、各住戸・各部屋へと伸びる既設の配線(アナログ2線式など)を流用してリプレイスが可能です。
既存の配線ネットワークを活かしたまま、カメラ付きインターホンへの変更や、スマートフォンの呼び出し・解錠に対応した最新システムへのリプレイスが、住戸内の内装を傷つけることなく実現します。
費用や工期を抑えられる既存配線の流用ですが、事前の確認を怠ると、導入後にトラブルが発生してかえってコストが高くつくことがあります。必ず以下のポイントをチェックしておきましょう。
配線自体は目に見えない壁の内部に通っているため、知らず知らずのうちに経年劣化が進んでいることがあります。特に導入から10年以上経過しているような配線は、被覆の劣化や湿気による腐食、あるいは微細な断線が起きているリスクがあります。
劣化に気づかずシステムだけを新しくすると、「動作が不安定になる」「頻繁に通信が途切れる」といった不具合の原因になります。流用前に、専門の施工業者による電気抵抗や導通(疎通)テストを必ず行い、流用に耐えうるか診断してもらいましょう。
流用する既存のケーブルが、新しく導入するシステムが要求する「規格」を満たしているか確認が必要です。
例えば、同じLANケーブルでも古い規格(カテゴリ5など)の配線の場合、大容量の映像データ通信を必要とする最新の超高画質カメラなどでは、通信速度が足りずにエラーを起こすことがあります。また、配線経由で電源を供給するPoE(Power over Ethernet)機能を使う場合、既存の細い配線では必要な電力を端末まで安全に送り届けることができないケースもあるため、システムの技術仕様と配線規格の適合チェックが必須です。
既存の配線はそのルートや容量が固定されているため、将来的に「リーダーの数を増やしたい」「防犯カメラを新しく追加したい」となった際に、既存の配線容量(芯数)だけでは対応できず、結局そのタイミングで新規配線工事が必要になるケースがあります。
今回のリプレイス時だけでなく、数年後にどのような拡張を予定しているかを見据え、既存配線の流用で本当に事足りるか、一部だけ新規配線を追加すべきかを設計段階で判断することが重要です。
既存配線を効率的に流用して、ローコストかつハイクオリティにセキュリティを刷新するためには、システム選びと技術の活用方法がポイントになります。
入退室管理システムのリプレイス時には、各メーカーの「電気錠対応状況」を確認しましょう。
多くの電気錠は共通の規格(美和ロックやゴール製など)で作られているため、既存の電気錠や通電金具をそのまま制御できるマルチコントローラーをラインナップしている製品がおすすめです。これにより、扉自体の加工や配線工事を極限までカットでき、端末とコントローラーの交換だけでリプレイスを完結できます。
既存の同軸ケーブルやアナログ配線を最新のネットワーク(IP)システムへ転用する場合は、「メディアコンバーター」や「同軸-LAN変換器」を導入プランに組み込みましょう。
これにより、高価なLAN配線の引き直し工事を一切行うことなく、既設の配線を「超高速デジタル通信路」に変えることができます。配線コストを抑えられた分、カメラのグレードアップや認証リーダーの機能強化に予算を回すことができるため、非常に賢いリプレイス手法と言えます。
セキュリティシステムの導入・更新において、既存配線の流用は「初期費用の大幅カット」「工期短縮」「美観の維持」という計り知れないメリットをもたらします。一方で、ケーブルの経年劣化や規格の互換性といったハードルもあるため、導入前には必ず専門業者による綿密な調査(疎通テストなど)を受けることが成功への鍵となります。
予算を賢く配分し、既存の資産を最大限に活かしながら、オフィスや施設のセキュリティ環境を最適なレベルへと引き上げましょう。
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